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三文芝居

日々の戯言を列ねていきます。
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妄想の2つ目

「弥子(ニィシー)!私の負けでいいから早く出てきなさい!」
夕暮れ時。
弥子は茂みの中に隠れてほくそ笑んだ。
かくれんぼに勝ったら少塾の宿題を教えてくれる約束なのだ。
美人で頭もいい叶絵は同い年だけれど、弥子にとっては姉のような存在だ。
「ニィシー!!」
叶絵の声に不安の色が混じる。
いくら大人びているとは言え、まだ数えで十に満たない子どもである。
心象を映したように天が群青を広げていくと、困り果てて立ち尽くしてしまった。

一方その頃の弥子も叶絵と同じく立ち尽くしていた。
しかし悲しいかな、理由はまるっきり正反対である。
固定された弥子の視線の先にはぐったりと転がった黒い生き物―――鳥である。
小さな弥子はこれまた開発途中の小さな頭脳をフル回転させて考えていた。
「焼豚みたいに焼いて…ううん、燻して燻製にしたりとか…あ、蒸して棒々鶏みたいにしたらいいかも!」
自他共に認める稀に見る大食らいの弥子の脳内で、鳥の行く末についての終点が決まると弥子はそろそろと鳥に近づいた。
手を伸ばし、触れようとしたところで声が掛かった。
「不触莫、蛆虫」
目蓋が開いて、鋭い眸が弥子を見上げた。
「え?」
「触るなと言っている。阿呆か、貴様」
鬱陶しそうに首をもたげてキョロリと眸を回す鳥に、弥子は絶句する。

が、次の瞬間、勢いよく鳥を抱き上げると一目散に叶絵の元を目指して駆け出した。
「叶絵(トゥアイ)~!」


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派生した妄想

その日、蓬莱島は天帝より至上の祝福を戴いた。
新たな鳳が生まれたのだ。
「これ霊亀!お前はあんまり騒ぐんじゃないよ!鳳が御蒲団から落ちてしまうじゃないか」
「分かった、分かった。つい嬉しくてさぁ」
幾つもの虹を描きながら空を泳ぐ竜たちが、霊亀の頭上で騒ぐのも無理はない。
浮かれた霊亀が四肢をバタつかせるものだから、甲羅が揺れてそこに住まうものたちが悲鳴を上げている。
当然被害は鳳の殿も例外ではなく、新たな主は絹の褥から転げ落ちて部屋の隅でうずくまっていた。
「ほらぁ!鳳が落ちちゃったじゃない!」
「ほんとか!?ごめんな鳳」
「お前たちものんびり見ていないで鳳を助けてやんなよ」
主殿の周りを翔けながら麒麟が風の精霊たちに声を掛けると、花の香を纏った乙女たちが鳳に駆け寄ってまだ小さな体を褥に運んだ。
乙女たちは数年振りに蘇った鳳の柔らかな体を撫でては、きゃらきゃらとよくとおる涼やかな声でさえずる。
「なんて麗しい鳳なんでしょう!」
「微温いぬばたまの羽」
「衿元は凍月」
「千歳緑の瞳のなんと美しいこと!」
「五月蝿。安静。(うるさい。静かにしろ)」
かしましい笑い声に痺れを切らした鳳が、居丈高に周囲を取り囲む精霊たちを一喝すると、乙女も獣もお互いに顔を見合わせ一斉に噴き出した。
「おやおや、今度の鳳は随分と威勢がいいねぇ」
「頼もしいじゃないか」
「さて、主の機嫌が麗しいうちに退散した方がよろしくてよ」
口々に嬉しげな感想を述べながら御殿を後にするものたちを一瞥して、鳳は欠伸をした。

無秩序という秩序に律された蓬莱は今日もどこかを漂う。
これは何時かの夢現のお話。



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HN:
紫藍夕亜
性別:
女性
自己紹介:
最近、某様のおかげで紫藍(桃兎)夕亜が定着しつつある妄想だだ流れの管理人。

現在超絶不親切不定期更新中。
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