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三文芝居

日々の戯言を列ねていきます。
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Miniature Garden《2》

「オラ、これでいいのか?シスター」
「うん。ありがとうゴダイさん」
質素なベッドに男を横たえ、ゴダイはヤコを振り返った。
ヤコは礼を言い、湯を張った盥からタオルを絞ると、泥に汚れた男の顔を拭った。

ゴダイは疾うに部屋を出て行ってしまって、客人用のこの部屋にはヤコと男の二人きり。
小さなオイルランプの火が、ゆらゆらと頼りなく男の肌を照らすだけというのに、昏々と眠るその人は陶磁器の人形のような高貴さを隠し切れていない。寧ろ増してさえいるような風情でそこに在る。
「奇麗な人…」
薄汚れた衣裳を纏って尚、ヤコにそう言わしめる男は、多少の傷はあるものの白磁の冷たさを孕んだ肌にプラチナブロンドの髪、骨ばった手足は美術品がごとく滑らかであった。
夜露に濡れた衣服を替えるべく、シャツのボタンを外そうとヤコが男の首もとに手を伸ばすと、

軋る音を立ててベッドのスプリングが抗議の声を上げる中、夜目にも判る翠玉がこちらを見下ろしていた。

「…子どもか」
「え?」
「我が輩に何をするつもりだった?」

ギリ、と組み敷いた私の手首を強く握って問う男の声は腹の底に響くバリトン。明らかな威嚇に体が竦んで動けない。

「…服を、替えようと」
「なぜ?」
「濡れていては体に悪いですから」
「………必要ない」
「どうして?」

私は真意を探るために男の緑を見つめた。

「…貴様には関係ない」
「…」
「それで?我が輩をどうしようと言うのだ?」
「どう…?」
「そんな貧相ななりで、物取りではないのか?」

男は品定めするように私を注視した。
主に胸元を。

「ちっ、違います!質素な服装なのは認めますけど、体型まであなたにとやかく言われる筋合いはありません!」
「別に我が輩貴様の体型をとやかく言った覚えはないが」
「~~~~いいから退いてください!」

至極愉しげに私の揚げ足を取る男の腕に込められた力は、それでも抜けなくてやっぱり身じろぎは叶わない。

「離してっ!」
「シスター・ヤコ?どうしかましたか?」

ノックと同時に響いた声に、私と男はドアを見つめた。




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Miniature Garden

大気を震わす鐘の音が夜空に響く。
時刻は20:00。
祈りの時間。

ヤコは他のシスターやブラザー、司祭達と共に祈りを捧げていた。
天に坐(ましま)す我らが偉父の、その聖なる血潮に見立てた紅玉が填め込まれた古めかしいロザリオを胸に抱き、ヤコは大司教の法話に耳を傾ける。司教の声は聖堂の高い天井に反響し、美しい歌のようにヤコたちの頭上に降ってくる。そんな中、幻想に捕らわれたように、うっとりと意識を浮遊させたヤコの耳に届いた小さな物音。ヤコは静かに席を立ち、薄く聖堂の扉を開けるとスルリと外へ出た。

暦の上では春とはいえ、夜気はまだまだ冬の領域にある。修道着の肩から厚手のストールを羽織り、音の出どころを探してヤコは教会の周囲の歩く。そして最初の角を曲がり、裏口の小さな扉の前に倒れ臥した人影を見つけた。
「もしもし?大丈夫ですか?」
男に駆け寄り、肩を叩いて声を掛ける。男は小さく呻いて微かに眉根を寄せると、それきり動かなくなったので、ヤコは慌てて人を呼びに裏口を叩いた。



**********

突発パラレル。
シスター・ヤコと犯罪者ネウロ(まだほとんど出てないけど。笑)
ネウロに助手顔で「ね!シスターvv」って言わせたいだけ。
MJのSmooth Criminalと天野月子の箱庭ヘビロテの賜物。

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HN:
紫藍夕亜
性別:
女性
自己紹介:
最近、某様のおかげで紫藍(桃兎)夕亜が定着しつつある妄想だだ流れの管理人。

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