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三文芝居

日々の戯言を列ねていきます。
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Miniature Garden《6》

月明かりに輝く薔薇窓を背景に、十字架の天辺に立つ人影にヤコは戦慄した。

あれは、人間ではない。

直感だった。
神の象徴に足を掛ける、なんて罰当たりな行為が出来る人間など殆ど居ないし、何より、アーチ状に広がる天井から吊り下げられた十字架の周りには、足場など無い。
鉄製の鎖を鳴らさずに、地上10メートルの高さまでジャンプ出来る人間がどこに居ると言うのか。

「どうした?ああ!ミジンコには人間の言葉が通じなかったか」

紡がれる声色は先日の。

「我が輩、探したのだ。貴様を」

男はそのまま足を踏み出した。どうやって登ったか知らないが、何度も言うように男の立つ十字架は宙吊りである。
勿論天井壁画を隠してしまう無粋な梁などというものは有る筈がないので、男の行く先は、当然床まで一直線コースだ。
ヤコは固く目を閉じ、響くであろう不快な音に備えた。
が、

「主人の話を無視するとはどういうことだ?躾がなっておらんな」

至極楽しそうに笑う男は十字架の足の側面に立っている。

「なん…で。そんなところに」
「おや?貴様、我が輩が人間ではないと分かった上でその質問か?」

男はクツクツと喉を鳴らして、こちらを見下ろして嗤う。
そして、ひらりと足を離して私の前に降り立つと、顎を掴んで私の顔を覗き込んだ。

「我が輩は魔人。地上の法則になど縛られん」
「ま、じん?」
「さてヤコよ、我が輩の食事を手伝って貰おうか。さあ、呼ぶがいい!我が名は…リューノ。リューノ・ジムノーアだ」



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紫藍夕亜
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女性
自己紹介:
最近、某様のおかげで紫藍(桃兎)夕亜が定着しつつある妄想だだ流れの管理人。

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