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三文芝居

日々の戯言を列ねていきます。
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Miniature Garden《7》

男は跪く私を見下ろして言った。

魔人、だと。

緑色の瞳がくるくると回る。
浮かぶのは愉悦か。
それはまるで、気に入りの玩具を手に入れた子どものような。

魔性ゆえの美貌にか、生理的な恐怖感からか、腰を折ってこちらを覗き込む男を茫然と見上げていると、耳まで裂けた口を開いて男が囁く。

「さあ、口は塞いではいない筈だぞ?」

スルリと耳に入り込むテノールは甘美な旋律。
私は促されるままに震える唇を開いていた。

「…リュー、ノ」
「上出来だ」

最後は掠れた喘ぎのような音にしかならなかった名前を聞いて、男は大層喜んだようだった。
男はパッと私の顎を掴んでいた手を離すと、くるりと向きを変えて正面扉へ向かう。
カツカツと高い音を立てて踵を踏み鳴らしながら歩く様は威厳に満ち満ちていて、先の倒れ伏していた気配など微塵も感じられない。

「どうしたヤコ。早く来んか、…このウジムシが」

その美貌に反して、性格は最悪のようだ。



「ちょ…痛いですって!離してください、自分で歩けます!」
「五月蝿い、騒ぐなカナブンの分際で。カメのような貴様の歩みに合わせていては我が輩はいつになっても食事にありつけん」
「だからって、頭!中身出ちゃいます!」
「勝手のいいように入れ直してやる」
「いやああああっ、」
「そら、静かにしろセミ」

リューノは悲鳴を上げたヤコを放り投げると、埃を払うようにレザーグローブを着けた手を打ち鳴らした。

「うう…痛い…膝打った…」

打ち捨てられたヤコが顔を上げると、目の前には聳える廃墟の尖塔。

「ここ、は…?」
「まもなく、ここで殺人事件が起きるぞ」
ニヤリと、猫のように細められた緑色が降り注ぐ月光に煌めくと、静寂の中でかすかな衣擦れと倒れ伏す物音が響いた。



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紫藍夕亜
性別:
女性
自己紹介:
最近、某様のおかげで紫藍(桃兎)夕亜が定着しつつある妄想だだ流れの管理人。

現在超絶不親切不定期更新中。
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