三文芝居
日々の戯言を列ねていきます。
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派生の4話目
「……」
何やら体中がむず痒い。
異変を感じて目を開けると、褥に散らばる無数の黒羽。
「これ…は?」
「あらぁ、これはお目出度いこと!」
「何用だ、阿耶」
衣の長い裾を引きずりながら滑るように寝台に坐る我が輩に近づいた天后・阿耶は、バサリと絹の掛布を我が輩に被せた。
「今日はお祝いにしなくては」
「祝い?なぜだ」
「勿論、鳳が成鳥になったお祝いですわ。朱寧」
手を叩いて侍女である天女を呼んだ阿耶は直ぐに雑事を言いつける。
「鳳にお召し物を。それから広間に宴の用意を」
「かしこまりました」
艶やかな黒髪の侍女は速やかに我が輩の着付けをしながら笑う。
「おめでとうございます、鳳」
「それほど珍しいことではないと思うが」
着せかけられる長衣の肌触りに戸惑いながら問う。
「みんな鳳の成長が嬉しいのですわ」
「フン」
「でも…凰がいないのはやはり寂しいですわね」
「凰?」
「はい、鳳の番になられるお方です」
「番…?」
何だそれは。
そんなもの、必要ない。
全てが定められているものだと?
莫迦莫迦しい。
刹那、少娘の顔が脳裏をよぎる。
(ウー!)
はて、あの娘の名は何と言っただろうか。
「ネウロ」
席についたものたちが一斉に天后を見る。
天后は転化を覚えた鳳の額に手を当てて宣言する。
「天帝は鳳に名前を授けられました。これよりそなたの名はネウロです」
鳳――ネウロは慣例に従い軽く頭を下げた。
途端に巻き起こった歓声の嵐に驚いて目を剥いた。
「ネウロ!」
「ネウロ様ぁ!」
風の精が楽を奏で、花の精が舞い踊るのを冷めた目で見やりながら、ネウロは眸はあの少娘の面差しを探していることに気付かない。
何やら体中がむず痒い。
異変を感じて目を開けると、褥に散らばる無数の黒羽。
「これ…は?」
「あらぁ、これはお目出度いこと!」
「何用だ、阿耶」
衣の長い裾を引きずりながら滑るように寝台に坐る我が輩に近づいた天后・阿耶は、バサリと絹の掛布を我が輩に被せた。
「今日はお祝いにしなくては」
「祝い?なぜだ」
「勿論、鳳が成鳥になったお祝いですわ。朱寧」
手を叩いて侍女である天女を呼んだ阿耶は直ぐに雑事を言いつける。
「鳳にお召し物を。それから広間に宴の用意を」
「かしこまりました」
艶やかな黒髪の侍女は速やかに我が輩の着付けをしながら笑う。
「おめでとうございます、鳳」
「それほど珍しいことではないと思うが」
着せかけられる長衣の肌触りに戸惑いながら問う。
「みんな鳳の成長が嬉しいのですわ」
「フン」
「でも…凰がいないのはやはり寂しいですわね」
「凰?」
「はい、鳳の番になられるお方です」
「番…?」
何だそれは。
そんなもの、必要ない。
全てが定められているものだと?
莫迦莫迦しい。
刹那、少娘の顔が脳裏をよぎる。
(ウー!)
はて、あの娘の名は何と言っただろうか。
「ネウロ」
席についたものたちが一斉に天后を見る。
天后は転化を覚えた鳳の額に手を当てて宣言する。
「天帝は鳳に名前を授けられました。これよりそなたの名はネウロです」
鳳――ネウロは慣例に従い軽く頭を下げた。
途端に巻き起こった歓声の嵐に驚いて目を剥いた。
「ネウロ!」
「ネウロ様ぁ!」
風の精が楽を奏で、花の精が舞い踊るのを冷めた目で見やりながら、ネウロは眸はあの少娘の面差しを探していることに気付かない。
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タイトル未定①
微シリアス風味。
究極の謎について。
死ネタ・パラレルが嫌いな方はバックプリーズ。
バッチコイな方はスクロールプリーズ。
シックスを倒した後、弥子が病気という設定です。
慈愛と憎悪は一体である。
「ね、デートしよ。ネウロ」
「断る」
壮絶なシックスとの戦いに勝ったものの魔力を限界まで使い切り、もう動くこともままならないネウロ。
謎を探すこともできない。
そして私はまだまだ未熟で、ただ、横たわるネウロのそばにいることしかできない。なんて、歯痒い。
「足なら用意するからさ、たまには外に出ようよ」
「必要ない」
「いーじゃん!気分転換も必要だよ!」
あれやこれやと言葉を重ね、なんとかデートの約束を取り付けた。
どんなに美味しく味付けようと、どんなに美しく盛り付けようと、どんなに想いを込めようと、
喰べてくれる主賓(ゲスト)がいなければ晩餐会は開けない。
主催者(ホスト)は私。
ゲストは貴方。
さぁ、いらっしゃいませ、サー・エピキュリアン。
究極の謎について。
死ネタ・パラレルが嫌いな方はバックプリーズ。
バッチコイな方はスクロールプリーズ。
シックスを倒した後、弥子が病気という設定です。
慈愛と憎悪は一体である。
「ね、デートしよ。ネウロ」
「断る」
壮絶なシックスとの戦いに勝ったものの魔力を限界まで使い切り、もう動くこともままならないネウロ。
謎を探すこともできない。
そして私はまだまだ未熟で、ただ、横たわるネウロのそばにいることしかできない。なんて、歯痒い。
「足なら用意するからさ、たまには外に出ようよ」
「必要ない」
「いーじゃん!気分転換も必要だよ!」
あれやこれやと言葉を重ね、なんとかデートの約束を取り付けた。
どんなに美味しく味付けようと、どんなに美しく盛り付けようと、どんなに想いを込めようと、
喰べてくれる主賓(ゲスト)がいなければ晩餐会は開けない。
主催者(ホスト)は私。
ゲストは貴方。
さぁ、いらっしゃいませ、サー・エピキュリアン。
妄想の③
「ねぇ、烏(ウー)?何でご飯食べないの?」
「貴様…何度言えば解るのだ?我が輩を下賤なカラスと一緒にするな」
「え~?だって真っ黒でカラスみたいだもん」
「貴様の頭にはやはり海綿が詰まっているようだな。見るがいい、この艶やかな羽を」
ウー、と呼ばれたその鳥は綿布団を敷き詰められた籠の中でバサリと翼を開いてみせた。
羽色こそ同色であるが、カラスのそれよりも複雑な彩を返す黒羽に、月光を集めた衿羽。
身丈よりも長い尾羽は先端に向かって漆黒、群青、瑠璃、翡翠と鮮やかな変化を呈している。
鋭い眼光を放つ猛禽の眸は深い千歳緑で、弥子の知る中に同じ姿を持つものはいない。
「うん、ウーが一番奇麗」
「当然だ。我が輩は鳳なのだからな」
「ホウ?鳳ってなに?ウーの名前?」
「貴様は、少塾に行っているくせに知らんのか?」
「むぅ~…だって難しいし、誰かさんが勉強させてくれないじゃん」
頬を膨らませてそっぽを向く弥子の肩に飛び乗って烏が笑う。
「まぁそう落ち込む事もあるまい。どうせウジ虫の如き頭脳で考えても無駄だ」
「ウジ虫の如きって何よぉ」
「言葉通りだが」
怒った弥子が烏を振り払おうと暴れるので、烏はケタケタと笑いながら籠に戻った。
「不変的弥好。」
「え?」
「何でもない。さて、我が輩明日にはここを発つぞ」
「…ご飯も食べてないくせに?」
「人間の食い物なぞ要らん」
体を震わせながら烏は思う。
多種多彩な動植物が蔓延る蓬莱島に在りながら、そのどれをも己の糧とすることが適わなかった鳳は、腹を満たすために島を飛び出した。
そして彷徨の挙げ句、遂に行き倒れて人の子に介抱されるという珍事にみまわれることになったが、おかげで自身の求めるものを見出した。
悪意の潜む混沌。
それが鳳を満たすものだった。
あの日、叶絵に宿題を教われなかった弥子が呪いながら半紙を黒く塗り潰したので鳳は初めての食事にありつけたのである。
以降、今日まであらゆる手を講じて弥子の勉学の邪魔をして狡猾に食糧を得てきた鳳は、実のところ飢えてはいなかった。
但し、それは幼鳥の鳳に相応しい悪意であり、成鳥たる彼を満たすものではないと賢しい鳳は理解した。
そして、鳳は次なる糧を求めて世界を翔るのである。
「不変的弥好。」
呟き、笑う。
世界が幸福に満ちていると教えてくれた少娘に感謝を込めて。
そのままでいい。
そのままの、心優しい貴様に、幸あらんことを。
「何言ってるの?」
「さぁな。戯言は終いだ。我が輩は寝るぞ」
「あ、待って」
籠の中でうずくまる烏に弥子の細い腕が伸びてくる。
「最後くらい、一緒に寝ようよ」
寝台に横たわった弥子の腕は温かで振り払うには少しばかり惜しく、やってきた睡魔の誘うままに二人は桃源郷の夢を観る。
「貴様…何度言えば解るのだ?我が輩を下賤なカラスと一緒にするな」
「え~?だって真っ黒でカラスみたいだもん」
「貴様の頭にはやはり海綿が詰まっているようだな。見るがいい、この艶やかな羽を」
ウー、と呼ばれたその鳥は綿布団を敷き詰められた籠の中でバサリと翼を開いてみせた。
羽色こそ同色であるが、カラスのそれよりも複雑な彩を返す黒羽に、月光を集めた衿羽。
身丈よりも長い尾羽は先端に向かって漆黒、群青、瑠璃、翡翠と鮮やかな変化を呈している。
鋭い眼光を放つ猛禽の眸は深い千歳緑で、弥子の知る中に同じ姿を持つものはいない。
「うん、ウーが一番奇麗」
「当然だ。我が輩は鳳なのだからな」
「ホウ?鳳ってなに?ウーの名前?」
「貴様は、少塾に行っているくせに知らんのか?」
「むぅ~…だって難しいし、誰かさんが勉強させてくれないじゃん」
頬を膨らませてそっぽを向く弥子の肩に飛び乗って烏が笑う。
「まぁそう落ち込む事もあるまい。どうせウジ虫の如き頭脳で考えても無駄だ」
「ウジ虫の如きって何よぉ」
「言葉通りだが」
怒った弥子が烏を振り払おうと暴れるので、烏はケタケタと笑いながら籠に戻った。
「不変的弥好。」
「え?」
「何でもない。さて、我が輩明日にはここを発つぞ」
「…ご飯も食べてないくせに?」
「人間の食い物なぞ要らん」
体を震わせながら烏は思う。
多種多彩な動植物が蔓延る蓬莱島に在りながら、そのどれをも己の糧とすることが適わなかった鳳は、腹を満たすために島を飛び出した。
そして彷徨の挙げ句、遂に行き倒れて人の子に介抱されるという珍事にみまわれることになったが、おかげで自身の求めるものを見出した。
悪意の潜む混沌。
それが鳳を満たすものだった。
あの日、叶絵に宿題を教われなかった弥子が呪いながら半紙を黒く塗り潰したので鳳は初めての食事にありつけたのである。
以降、今日まであらゆる手を講じて弥子の勉学の邪魔をして狡猾に食糧を得てきた鳳は、実のところ飢えてはいなかった。
但し、それは幼鳥の鳳に相応しい悪意であり、成鳥たる彼を満たすものではないと賢しい鳳は理解した。
そして、鳳は次なる糧を求めて世界を翔るのである。
「不変的弥好。」
呟き、笑う。
世界が幸福に満ちていると教えてくれた少娘に感謝を込めて。
そのままでいい。
そのままの、心優しい貴様に、幸あらんことを。
「何言ってるの?」
「さぁな。戯言は終いだ。我が輩は寝るぞ」
「あ、待って」
籠の中でうずくまる烏に弥子の細い腕が伸びてくる。
「最後くらい、一緒に寝ようよ」
寝台に横たわった弥子の腕は温かで振り払うには少しばかり惜しく、やってきた睡魔の誘うままに二人は桃源郷の夢を観る。
HN:
紫藍夕亜
性別:
女性
自己紹介:
最近、某様のおかげで紫藍(桃兎)夕亜が定着しつつある妄想だだ流れの管理人。
現在超絶不親切不定期更新中。
現在超絶不親切不定期更新中。
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